マインクラフトの魅力は、その自由度の高さです。プレイヤーは広大なサンドボックスの中を縦横無尽に動き回って世界を構築し、ロールプレイを楽しむこともできます。多くのクリエイターは、冒険心あふれる壮大なシナリオを練り上げますが(現在進行中の Dream SMP をチェックしてみてください)、別の方法で新たな領域を切り拓くクリエイターも増えています。現実世界における自身のアイデンティティをゲームの中で表現しているのです。YouTube のマインクラフト コミュニティは、世界中の多種多様な人々、文化、生活を反映するという意味において、このアプローチが持つ力を示しています。
視聴者の住んでいる場所にかかわらず、マインクラフトの動画を制作する YouTube クリエイターなら、地元で親しまれている行事や祝祭日を祝うパーティーを開いたことがあるのではないでしょうか?ブラジルのチャンネル Amandinha では、現地で毎年 6 月に開催されるフェスタ ジュニナを祝い(ゾンビに邪魔されるのは、マインクラフトで定番の展開です)、Mều Channel では、ベトナムの旧正月であるテトを祝うパーティーを友人とともに開催し、見事な花火大会で動画を締めくくりました。スウェーデン人の YouTube クリエイターである Kimmy POWER の Kim と STAMSITE の Marcus Nyman は、現実にスカンジナビアで行われるのと同じように、輝く太陽と花で満たされた夏至祭のイベントまで主催しました。
多くの人が一人で動画を視聴していますが、コメント欄を見てわかるように、こうした動画は楽しみながら学ぶ機会とともに、視聴者を歓迎する交流の場も提供しています。今回は、ゲームの中でディワリ祭や国際母語デーを祝ったり、自身のセクシャリティを表現したりしているクリエイター数名に話を伺います。
Khatarnak Ishan は、ムンバイを拠点に活動するゲーム クリエイター Ishan Khedkar のチャンネルです。
このチャンネルを始めるきっかけは何でしたか?
私の最初のチャンネル Onespot Gaming は、2016 年に英語で運営を開始しましたが、規模が成長するにつれて、視聴者からヒンディー語の動画を求められるようになりました。Onespot Gaming には、すでにヨーロッパと米国で相当数の視聴者がいたので、(ヒンディー語を使用する視聴者に)特化したチャンネル Khatarnak Ishan を立ち上げました。
マインクラフトでディワリ祭を祝うことを最初に思い付いたのはいつですか?
新型コロナウイルスのロックダウン中、友人と一緒に例年通りのやり方で(ディワリ祭を)祝うことはできませんでした。それならば、_マインクラフト_で祝おうと考えたのです。チャンネル登録者向けに準備した場所で、花火を上げることができます。視聴者は花火を見て楽しめるでしょうし、私も楽しんで準備できます。
一度に複数の花火を打ち上げられるのが素敵だと思います。こうした仕掛けをどのように実現したのですか?
これは、ゲーム内の機能を使っています。マインクラフトには装置や自動ドアなどを作る際に使用できる、レッドストーンというアイテムがあります。私は花火の発射装置とクロック回路を作るのに使いました。クロック回路が発射装置に周波数や信号を送ることで、毎秒ごとに花火が打ち上がる仕組みです。
今回のディワリ祭のお祝いは、あなたとコミュニティの視聴者とのつながりを強めたと思いますか?
確実にそうだと思います。祭事は、現実の世界でもそのような役割を果たすものです。社会におけるつながりを強め、友達や親類との距離を縮めてくれます。そのようなコンテンツを見て悲しくなる人は誰もいないと思います。
Mr. Dsb を運営する Rohan Khan Sakib は、ダッカを拠点とする 21 歳の YouTube クリエイターで、現在はビデオゲームのデザインを学んでいます。
国際母語デーと、マインクラフトの中で表現したことについてお話しいただけますか?
国際母語デーは私の国にとって非常に重要です。なぜなら実際に、ここバングラデシュでベンガル語を称えたことから世界母国デーが制定されたからです。ダッカには複数の記念碑があります。そこで私はマインクラフトの中で記念碑を建設して、自分が献花するロールプレイを演じることで、バングラデシュの言語の自由のために闘った人たちに敬意を表しました。
イードのお祝いもマインクラフトで行っていました。ラマダン中にイードのコンテンツを制作するのは大変でしたか?
イードの動画は、夜に制作していました。日の出から日没まで断食しなければならないので、断食の時間帯には撮影や編集を一切せず、その時間が終わってから行っていました。断食中はとても辛いものです。こうした動画は、(視聴者の皆さんが)一日を乗り越える助けになると考えています。
バングラデシュ人としてのアイデンティティを称えるコンテンツを作るきっかけとなった YouTube クリエイターはいましたか?
特におらず、どちらかというと、自分で思いつきました。しかし、Asbond のような、バングラデシュにルーツを持つ数名の YouTube クリエイターも、同様のコンテンツを作り始めています。英語でコンテンツを作っているクリエイターもいるので、さまざまな国の視聴者が私たちの文化について学んでくれる機会にもなっています。これは非常によいことだと思います。
TheFamousFilms チャンネルの Bryan Mendivil は 28 歳で、ラスベガスを拠点にマインクラフトのコンテンツを制作している YouTube クリエイターです。
マインクラフトのロールプレイ動画を制作していますね。これがどういう意味なのか、なじみのない人に向けて説明していただけますか?
マインクラフトのロールプレイとは、基本的には多数のキャラクターが登場する、ストーリー仕立ての動画のことです。
作品には、LGBTQ+ のキャラクターのストーリーもよく登場します。お気に入りのエピソードはありますか?
2017 年にカミングアウトして以来、自分自身を物語の中心に位置づけて、異性以外の恋愛対象を持つことがありうることを示したいと思っている自分に気づきました。自分自身のこうした部分をコンテンツに反映させていくのを、多くの視聴者が尊重してくれました。ですから、私の好きなエピソードの一つは、『Origins of Olympus Season Two』の結婚の回です。エピソードの中で、私が演じるアフロディーテの息子と、アヌビスの息子であるもう一人のキャラクター、インプが結婚しました。私たちは恋に落ちたのです。
そんなふうに温かく受け入れて尊重してくれる視聴者層を、どのように形成してきたのですか?
今あるコミュニティを育ててこられたのは、私たちが皆とてもポジティブだからだと考えています。結局のところ、最も重要なのは、視聴者と話をしてその意見をよく聞き、視聴者がチャンネルを楽しめる安全な場所を作ることです。
Logic Pro X Gaming は、マインクラフトの動画を制作している 31 歳の目の不自由な YouTube クリエイター、Chris O’Meally のチャンネルです。
動画の中で、画面を操作して追加の音声キューを聞いていますね。ご自身がゲームをプレイする際のこうした側面を視聴者に紹介することが重要だとお考えですか?
そう考えています。なぜなら、私は視覚障がいのないプレイヤーも同様に使っているテクニックを見せるだけでなく、ユーザーが存在を知らないたくさんの機能や MOD に対する認識も広めようとしているからです。
そのような MOD のうちの一部の開発に関わったそうですが、どのような経緯があったのでしょうか?
マインクラフトの開発元である Mojang から連絡を受けて、Mojang の YouTube チャンネルの動画に出演したところ、本当にたくさんの MOD 開発者が私のチャンネルを発見してくれました。コミュニティが作られ始めて、開発者たちは私の配信動画に参加し、私がプレイしているところを見てくれるようになりました。私たちは、これまで私が苦労してきたことを話し合い、時間をかけてモブ、POI、作業台、チェストの音声情報を含んだ MOD 一式を開発しました。
エンダードラゴンを 1 人で倒す動画には、とにかく驚きました。最高の条件が整っていたとしても、成し遂げるのは困難だと思います。
この動画では、訓練のために優に 2 か月間を費やしました。塔の登り方、水バケツを使った着地動作、その間のドラゴンの回避や他に起きていることへの注意など、習得しておくべき個々のスキルをひとつずつ練習しました。筋肉に動きを覚えさせ、実際の動画の撮影は 1 回で終わりました。
Logic Pro X Gaming チャンネルは、目の不自由な人たちによるマインクラフトのコミュニティの成長にどのように寄与してきましたか?
もしも YouTube のマインクラフトのコミュニティにいる、しかるべき人たちが連絡をくれていなかったら、私はこうした活動を行うノウハウやコネクションを未だに持てていないだろうと思います。開発者だけでなく、チャットのモデレーター、サムネイルやチャンネル アートの作成を手伝ってくれる人たちもいます。さまざまな人の協力があって、このチャンネルが実現しています。だから私は、いつも「私たち」という言葉を使っています。