HORIBA Wonder Channel 「ジョロウグモ」
夏から秋にかけて、大きな巣網を張るジョロウグモ。日本に棲息するクモとしては大型であり、黄色と緑青の鮮やかな模様もあり、とても目に止まりやすい。
電線や軒先にも巣を作るため、都心部でも普通に棲息しており、その意味では馴染み深い生き物と言えるだろうが、その生態が詳しく解明されたのは、ごく最近のことである。
一般的にクモ類は、昆虫のような複眼ではなく、八つの単眼を有する。しかし、一部のクモを除き、その視力は低く、明るさの違いを知る程度しか機能していない。
また、単眼は、頭の上に並んでいるため、背後や側面の明るさを知ることはできても、口の周りや腹側の情報の明るさを知ることはできても、口の周りや腹側の情報を得ることは出来ない。ではなぜ、クモは巣に獲物が掛かったことが判るのか。
クモの感覚器官は、脚の先に生えた細かい毛にある。この毛が空気の振動を捕らえ、獲物となる虫の羽音を察知する。つまりクモは、優れた聴覚で獲物を見つけるのである。
獲物が巣のどこに掛かったかは、脚の節々にある琴状器官という特別なセンサで感知する。この器官は音を聞き分ける聴覚の機能と同時に、身体全体の歪みの情報を判別している。巣の揺れが風によるものなのか、獲物がもがいたために起こされたものなのか、身体全体の揺れを分析し、それが獲物であれば巣のどこに掛かったのか、高度な情処理を瞬時に行っているのだ。
巣を作るクモの多くは、獲物に糸を投げてその動きを止めるが、ジョロウグモは巣に掛かった獲物に近づくと、すぐに噛みつく習性がある。これは、ジョロウグモが大型のクモの割りに、主食とするのが小バエや羽虫といった小さな昆虫であることに由来する。
バッタやトンボのように大きな獲物が掛かると、すぐには獲物に向かわず、少し弱った頃合いを見定めて獲物を襲う。獲物が弱ってきたのか、まだ反撃する余力があるのか、それも巣の揺れ方を知ることで判断しているのだ。
空気の振動を知る聴覚、そして高度な歪みセンサ。それは八本の足先に集中しているが、歪みセンサは脚以外の体表にも分布しており、風に揺れる巣の上で身体を安定させることにも使われているのだ。
全身にセンサをまとい、その情報を高度に統合して素早く行動する。そのメカニズムは、ロボット工学の分野からも大いに注目されている。
人類には、これほどまでに自然を計るセンサは無い。しかし人類には、分析力という種を超えた力がある。その分析力で自然を計り、多様で美しい地球の姿を守ること、それが人類に与えられた使命といえるだろう。
ハイテクの一歩先にいつも堀場製作所
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