あなたらしい最期を生きる本-絵で見るはじめての終末医療マニュアル
奥井識仁(おくい ひさひと) 著 ハート出版刊 より
http://www.810.co.jp/book/ISBN978-4-89295-590-7.html
6章 疾患症状別のケア
■食に関する苦痛に対してできること(1) 食べられないのは、自然なこと
がんになって『食欲がわかない』『食べたいのに体が受け付けない』というのは当然です。身体機能が低下して、消化・吸収が障害されてくるからです。またがんの場合、せっかく点滴などで栄養を入れても、がんが消費してしまい本人の栄養になりません。
でもうまくできているもので、この食べられないという普通の現象のために、人はやせていきます。やせると当然がんにも栄養がいきませんので、がんが小さくなるのです。
例を紹介しましょう。
私の診た患者さんで膀胱がんの女性がいました。息子さんが、あまりに食が細くなったお母さんを心配して連れてきたのです。CTをとると、骨盤全体にあった膀胱がんが干からびて小さくなり、痛みがなくなっていました。それどころか、体重が軽くなったおかげで、息子さんが軽々と持ち上げて介護しやすくなっていたのです。
私は、こう思います。
大昔の日本では、人は食べられなくなると、やせて、軽くなり、そしておだやかに旅立っていきました。今と違って、点滴も胃ろうもありませんから、栄養は口から入る分だけでした。
たくさんの穏やかな死を見てきた僧たちは、自分がいよいよ食べられなくなると、仏になることを望みました。そこで彼らは生きながらミイラになったのです。このミイラは即身仏と呼ばれ、今も大切にされています。その姿を見ると、天寿で、痩せて、静かに旅立ったような顔・体の人がたくさんいます。つまり日本では、大昔から、食べられないということを自然のこととして、あわてず、静かに受け入れていたのです。
■食に関する苦痛に対してできること(5) 栄養をとればよいものではない
末期で食事がとれなくなった患者さんのために、点滴で栄養をとらせるのはありがちなことです。しかし私は、何か目的があって無理してでも死が訪れるのを伸ばしたいのでなければ、勧めるべきものではないと考えています。
というのも、体そのものが水分や栄養を利用することはできなくなっているので、がん自体がそれを吸い取ります。その結果、さらに多くの腹水や胸水を産生して、体を苦しめることになるからです。また、心臓が弱っている人に点滴をしすぎて負荷をかけると、足がむくんできます。これもまた、大変な苦痛です。
医師仲間にどうして点滴するのか聞いたところ、「家族が納得しないから」と答える人もいます。ですから、その点滴が本当に必要なのか、なにを目的にしているのか、ちょっと考えてみてください。
もちろんこの時期の点滴全てが悪いわけではなく、ビタミンを点滴したり、ほどほどに脱水を改善することで、体が楽になる場合もあります。
■排泄に関する苦痛に対してできること(1) 自分で排泄したい
末期になると、排泄自体が大変になってきます。歩くのも一苦労で、自力でトイレに行くのもままなりません。
しかし、私が出会ったすべての患者さんが、「自分の排泄は最後まで自分でしたい」と希望しました。「自宅の慣れたトイレに自分で歩いていって、自分で排泄したい」そう望むのです。そこで、末期の患者さんができるだけ自分で排泄できるような治療や指導をしていきます。
最近、『頑張らない』という言葉が市民権を得て、頑張りすぎる傾向をたしなめる風潮があります。しかし、こと排泄に関しては、『頑張る』でよいのです。患者さん自身の頑張りだけが、「最後まで自力で排泄する」という希望を支えるのです。
ハート出版
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知ってよかったです。ありがとうございました。
kappin1962 5 months ago
感動しました! どうもありがとうございました
Misakimuffin 2 years ago