今井研究室では、貝殻や骨などの生体がつくる鉱物であるバイオミネラルに関する研究を行っています。
現代の生活は、金属、半導体、プラスチックなどを中心とする物質文明に支えられており、大量のエネルギーや廃棄物が環境に負担をかけています。一方、生物は、常温・常圧の水の中という温和な条件で環境に負荷をかけることなく精緻で高機能なさまざまな材料を作り上げています。
Q「貝殻や真珠、人間の骨など、バイオミネラルは小さな結晶が集まって大きな構造体を作っています。さらに小さな結晶が方位を揃えて並んでいてそれが構造を作っていくために高い機能を持っているということが、我々の研究で新しく分かってきました。」
Q「今までだと、高い機能を出すためなら特殊な金属元素を使わなければなりませんでした。希少元素をたくさんいろんな所から持ってきて使わなければいけなく、それは価格も高いし危険性や毒性も持っていたりします。それに対して我々はなるべく身近な材料、例えば鉄のような金属をうまく使って高い機能を出そうと考えています。そのためには実はナノ構造を制御することが必要です。ナノ構造が制御されて連結されて高い表面積あるいは高い結晶性を持つことで同じ元素でも高い機能を出せます。したがって高い機能性の材料を実は安価で安全な金属を使って作ることができるのです。」
このような材料を作るためにはバイオミネラルの合成の手法を真似ていかねばなりません。階層構造をもつバイオミネラルが形成される本質は、さまざまな有機分子によって制御された自己組織化的な結晶成長にあります。そのため、特殊な水溶性高分子を用いれば貝殻や卵のカラと同じようなナノ構造体を水溶液中で合成することができるのです。
Q「ナノ構造を制御しながら成長させるというのはかなり難しいです。バイオミネラルがやっている技術というのはかなり洗練されていますので、それを単純な水の中で人工的に再現させるのはやはりかなりの技術、知識の集積が必要になります。そこに今みんなでトライアルしています。面白いのは、難しいバイオミネラルがやっている作業ですが、実はエッセンスを捕まえると比較的簡単にそれが再現できる時があるということです。そうするとビーカーの中で非常に素晴らしい精密な材料が自発的に出来上がっていきます。それを発見するのは大変おもしろいと思います。」
Q「このような材料合成ができるようになると、まず合成時にエネルギーを使わなくて済みます。合成にものすごい高いエネルギーを使うとそれだけでCO2や廃棄物がたくさんでます。それに対してバイオミネラルはほとんどエネルギーを使いません。真空や高圧高温を使わずに室温の中で、ものづくりをします。ですからエネルギーが少なくてエコな状態でものづくりができて廃棄物が少ない。さらに合成されたもの自体も例えば炭酸カルシウムや酸化鉄など無害な材料で高機能をだすので、これはエコな材料ということです。」
リチウムイオン電池や太陽電池の電極のように高い結晶性と大きな比表面積が必要なシステムは、実は生命活動の機能と通じるところがあります。このような技術の将来は、生物のように無駄なエネルギーや資源を使わず、ありふれた元素で高機能を発現し、リサイクルが容易で、自然に還っていく、究極のエコマテリアルの開発につながっています。
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