指揮:マイケル・ティルソン・トーマス
演奏:PMFオーケストラ
交響曲第5番嬰ハ短調は、グスタフ・マーラーが1902年に完成した5番目の交響曲。5楽章からなる。
マーラーの作曲活動の中期を代表する作品に位置付けられるとともに、
作曲された時期は、ウィーン時代の「絶頂期」とも見られる期間に当たっている。
1970年代後半から起こったマーラー・ブーム以降、
彼の交響曲の中で最も人気が高い作品となっている。
その理由としては、大編成の管弦楽が充実した書法で効果的に扱われ、非常に聴き映えがする事、
音楽の進行が「暗→明」というベートーヴェン以来の伝統的図式によっており、
マーラーの音楽としては比較的明快で親しみ易い事が挙げられる。
とりわけ、ハープと弦楽器による第4楽章アダージェットは、
ルキノ・ヴィスコンティ監督による映画「ベニスに死す」(トーマス・マン原作)で使われ、
ブームの火付け役を果たしただけでなく、マーラーの音楽の代名詞的存在ともなっている。
第2番から第4番までの3作が「角笛交響曲」と呼ばれ、声楽入りであるのに対し、
第5番、第6番、第7番の3作は声楽を含まない純器楽の為の交響曲群となっている。
第5番で声楽を廃し、純器楽による音楽展開を追求する中で、
一連の音型を異なる楽器で受け継いで音色を変化させたり、
対位法を駆使した多声的な書法が顕著に表れている。
このような書法は、音楽の重層的な展開を助長し、多義性を強める要素ともなっており、
以降に続く交響曲を含めたマーラーの音楽の特徴となっていく。
また、第5番には同時期に作曲された「少年鼓手」(「少年の魔法の角笛」に基づく)や、
リュッケルトの詩に基づく「亡き子を偲ぶ歌」、「リュッケルトの詩による5つの歌曲」と
相互に共通した動機や曲調が認められ、声楽を含まないとはいえ、
マーラーの歌曲との関連は失われていない。
更に第4番以降しばしば指摘される「古典回帰」の傾向についても、
後述するようにそれ程単純ではなく、書法同様の多義性を孕んでいる。
※第4楽章
アダージェット Sehr langsam.(非常に遅く)ヘ長調 4/4拍子 三部形式
ハープと弦楽器のみで演奏される、静謐感に満ちた美しい楽章である事から、
別名「愛の楽章」とも呼ばれる。
「亡き子を偲ぶ歌」第2曲「なぜそんな暗い眼差しで」及び
「リュッケルトの詩による5つの歌曲」第3曲「私はこの世に忘れられ」との関連が指摘される。
中間部ではやや表情が明るくなり、ハープは沈黙、弦楽器のみで憧憬を湛えた旋律を出す。
この旋律は、終曲でも使用される。
尚、楽章の表題の「アダージェット」を速度表記の「やや遅く」の意味と取ると、
演奏指示のSehr langsamと矛盾する。
速度表示と見ず、「小さなアダージョ」とでも解するのが妥当であろう。
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