アルバム「花さかり」より。作詞阿木耀子作曲宇崎竜童編曲若草恵。「言はぬが花」と同じ作家、同じアレンジャーの作品である。若草氏のアレンジが「いはぬが花」のタイトなリズムのR&B風なアレンジとはガラリと変わっている。今度のアレンジでは、この「寒椿」の曲の持つ冷たく、奥行が深い世界を見事に表現している。阿木さん・宇崎氏が作り出す様々な楽曲の中で、僕が好きな世界のひとつがこの曲のもつ世界だ。純邦楽のような匂いも感じ、なおかつロックの匂いも感じるという、宇崎氏の持つ独特なメロディに、阿木さんの文学的な詞の世界が見事に溶け合った世界である。「木洩れ日」から始まり、「娘たち」、「霧雨楼」、「賭け」、「落ち葉の里」と続き「曼珠沙華」で頂点に達し、「イントロダクション・春」で頂点を極めるという系譜である。阿木さん・宇崎氏のこの世界と、浜田省吾氏の書くメロディはまったく正反対の世界のようなのだが、この二つの世界は両方とも完全に僕のツボにピッタリはまってしまうのである。この曲の阿木さんが書いた「寒椿」の直筆の原稿が手元にあり、その歌詞原稿を見ながらこの曲を聴き直してみた。印刷された活字の詞を見ているのと違って、阿木さんがこの詞を書いた時の思いまでが伝わってくるようで、新たな感覚でこの曲を聴いた。百恵は「♪冬木立に...」からの抑えた歌い方から、「♪手折る前に落ちて浮んだ花一輪〜」の抑えていても鬼気迫る感じが、伝わってくるように歌っている。やはり、後の大傑作「曼珠沙華」に通じる歌い方が、この時、既にできあがってきていることに気づかされた。(以上回想記より全文抜粋)
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