[慶應スピントロニクス 研究連携先 - 樽茶・大岩研究室 , 東京大学]
東京大学の樽茶・大岩研究室では、低次元電子系の量子輸送、電子状態とスピン相関、スピンを利用した量子情報処理の物理とハードウエアの実験研究を行っています。
研究室では、半導体を微細化することによってできる1、0次元の電子系に着目し、人工原子、分子における多体効果、強磁場中での相関現象、電子スピン、核スピンの関与する伝導現象、1次元朝永ーラッティンジャー相互作用液体の電子物性、スピン量子計算の基礎物理の研究を行っています。また、新しい手法として、表面敏感走査プローブを利用した状態密度の直接観察法を開発しています。
「私たちの研究室で今一番大きなテーマとして、力を入れているのは、半導体中にある原子という最も基本的な粒子の量子力学的な性質をどうやって厳密に制御して、どうやってその性質を調べて、どうやったらうまく利用できるのかということです。この研究は15年くらい前に最初にスタートしました。その当時、量子ドットと呼ばれる小さい構造を作ると、その中に電子をうまく閉じ込めることができて、その性質を調べたり、状態を制御したりすることができるということを初めて実験的に見つけて世界に報告しました。」
人工原子内に電子を一つずつ注入していくと、量子の閉じ込め効果によって電子は軌道を描き、本物の原子とよく似たエネルギー準位をとります。人工原子の作製には極めて精密な制御が必要とされますが、樽茶教授はこれを世界で初めて実現しました。
「一個の電子の振る舞いが如実に見えてきたので、これを利用してもっとたくさんのことが分からないかとか、これを使ってうまく新しい技術応用ができないかとかいう研究をここ10年くらいやっています。その中で発展して出てきたのが、うまく電子のスピンの量子力学的性質を使うと量子情報を構成することができて、その量子情報を演算に使うと量子計算機というものができ、その量子計算機の単位を電子のスピンを使って作ろうとしています。」
量子計算では、「0」でもあり「1」でもあるという量子力学的重ね合わせ状態をとる量子ビットを利用します。n量子ビットあれば、2のn乗の状態を同時に計算できます。理論上、現在の最速スーパーコンピュータで数千年かかっても解けないような計算でも、例えば数時間といった短い時間でこなすことができます。
「ここまで持っていくためには、一万個のビットだとか十万個のビットが必要になります。でもその一万個や十万個のビットをすぐに作れるわけではありません。そこまで到達できる単位をうまく拡張していくという手順が必要です。我々含めて世界中の研究者がやっているのが、一個とか二個とかいうビットが必要で、おそらくここ数年で5ビットとか10ビットまでできると思います。だいたい1.5年から2年で倍になっていくことが予想されるので、そうすると20年から30年くらいかかって一万ビットとか十万ビットとかが実現できるのではと思います。これが20年、30年先でないとご利益が見えて来ないかというとそういうことではなく、5年、10年先でも10ビット、100ビットという時代を経なければ先に行けないので、そういう時点でいろんな研究の成果がでてくると思います。」
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